|
|
|
|
|
サムターン回し |
|
ここ最近、また、新たな手口が蔓延しています。それは、針金状の工具で室内側の施開錠用のつまみ(サムターン)を回して錠をあける「サムターン回し」という方法です。 |
|
|
1.サムターン回し開錠とは? |
警察で統計を収集している「サムターン回し」手口とは、ドアの鍵穴(シリンダー)の横に、ドリルなどで直径10mm程度の穴を開け、そこから針金状の専用工具を挿入し、部屋内のサムターンを不正に操作するものです。
「カム送り解錠」と同様、従来の防犯対策の王道と思われていたピッキング対策がさていても、無関係に行うことができる、たいへん恐ろしい手口です。 |
|
|
サムターン回しは平成13年あたりから、マスコミで「新手口発覚」として大々的に報道されはじめました。ピッキング犯罪の減少と呼応するように増加したのですが、前年比で数倍の伸びは示すものの、ピッキングよりは少ない発生率であったことがわかります。ただし、警視庁管内(東京都)の集合住宅だけでみた場合、平成15年以降はピッキングの発生数を逆転していることが確認できています。つまり、大都市圏を中心に発生した手口が時間とともに地方に及ぶという、ピッキング渦と同じ動向を見せるのであれば、地方では今後増える可能性が高く、決して楽観視できるものではないということなのです。 |
ピッキングとドリルによるサムターン回しの犯罪発生認知数の推移
(警察庁、全国統計) |
|
その他の「サムターン回し」? |
警察が数字を追っている手口は、あくまで扉に穴を開けるものですが、サムターンを不正操作する方法には、それ以外の方法もあることが知られています。なかには、まったく痕跡を残さないものさえもあるのです。
|
バリエーション1 扉の脇にある明り取り窓のガラスを破壊して |
従来型の犯行で、素人でも簡単に模倣できるため、たいへん多い手口です。特に一戸建ての住宅などはそういったつくりの玄関が多く、被害にあいやすいといえます。仕分け的には、ガラス破りに数えられます。
|
バリエーション2 ドアに付属しているパーツを破壊、撤去して |
ポスト口やのぞき眼鏡(ドアビューアー)などを破壊したり取り去ったりして、そこから手や特殊工具を挿入する方法です。のぞき眼鏡については、外部から簡単に取り去ることが出来るものがあります。また、ポスト壊しについては従来から見受けられる手口です。ピッキングできないカギが多くなった昨今、開錠業者が最終手段として用いることが多い技法で、その流出が心配されています。
|
バリエーション3 ドアと枠の隙間を利用して |
ドアとドア枠のわずかな隙間から針金状の工具を知恵の輪のように挿入し、サムターンを操作してしまう方法です。ドアガードプレート(隙間隠し)で隠蔽されていれば良いようにも思えますが、長さが20cm程度の一般的なものでは、まったく問題なく突破できてしまいます。
|
バリエーション4 大きな穴を開けて |
ドリルで小さな穴を開けるのではなく、ドア自体を破って、手が入るほどの大きな穴を開けてしまう手口です。昔の勝手口ドアの金属パネルにとどまらず、マンションの軽量鉄扉でも行えてしまいます。仕分け的にはドア破壊に数えられます。 |
|
2.なぜおきる?サムターン回し |
今回については、錠の弱点を突いたというより、ドアの脆弱さのためにおきた手口と言えるでしょう。特に「ドアにドリルで穴を開ける手口」については、それが顕著な事例と言えます。 |
「鉄の扉」は、勘違い |
今回の手口も、被害例が多いのはマンション、アパート等の集合住宅です。それらの玄関ドアは「鉄製」だから「丈夫」だと思われている方は多いでしょう。しかし、それらは実は「鉄扉」ではなく「軽量鉄扉」という製品区分になります。「鉄扉」は1.6mm程度の鉄板を曲げ、溶接して作った扉です。しかし、マンションで使用される「軽量鉄扉」は、0.8〜0.6mm程度の薄い鉄板を曲げて貼り付けただけの扉です。
軽量鉄扉は、防火用として、法律で認められたものです。マンションの玄関には、そういった扉を使用することが義務付けられています。しかし、そういった扉の多くは、防犯的配慮は一切されていないのです。実際、ドリルなど用いずとも、先の尖った工具で突くだけでも穴が開くものもあります。
まして、低層の賃貸物件や、旧式アパートなどは、もっとやわらかいアルミの表面材のものや、木の中空の扉にごく薄い金属板を貼っただけのものもあり、さらに同手口に対する耐久性が劣るのです。 |
「音」よりも「スピード」 |
当初はドリル、しかも音がしないように手回しのものを使用していると考えられていましたが、実際にはバッテリードリルを用いることも多いようです。「そんなものを使ったら、大きな音がして、すぐに犯行が露呈するのでは」と思われるでしょうが、共用廊下での物音は、室内、特に近隣には響きにくいものです。まして、電動ドリルであれば、穴を開けるのに数秒とかからない現実があります。そうなると、対策されていない錠は、1分もかからずに開けられてしまいます。 |
素人でも簡単 |
ピッキングなどはそれなりの修練が必要でしたが、サムターン回しはもっと簡便な練習で、できるようになります。そういう意味からも、予備軍がたいへん多い可能性があります。穴を開けるのはともかくとしても、針金状の専用工具についても、あるアングラ雑誌などでは、その解説や製作方法まで公表しているのです。 |
|
3.最悪の手口、サムターン回し |
サムターン回しは、手口としてはたいへん悪質なものだと考えられています。それは、現状復旧にたいへんな時間とお金を要するからです。 |
どうするの?ドアの補修、交換 |
ピッキングやカム送りは、破壊を伴わない「非破壊開錠」です。たとえ被害があっても、被害部品そのものをリニューアルすれば事足ります。しかし、穴を開けられたドアは、補修で元通りにすることはできません。
たとえば、ドアを交換するとなると、1枚が数万円します。しかも、ほとんどの場合が取り寄せとなりますので、納期が1週間以上かかることがほとんどです。設計によっては、物件オリジナルデザインのドアであることもあり、その場合は金額が跳ね上がるばかりか、納期も1ヶ月以上かかることもあります。補修の金属板を貼り付ける応急措置はありますが、その間壊れたままのドアで過ごすのは、精神的にも辛いものがあります。また、それでは、見た目もいかにも「補修」という感じで、みっともないことになってしまいます。 |
|
エスカレートする手口 |
小さな穴の場合は、まだ補修のやりようもあります。しかし、穴が大きくなると、そうも言っていられなくなります。
穴が大きくなる要因として、簡易なサムターン回し対策が進んだことがあげられます。いわゆる「カバーをつけて工具が引っかかりにくくする」「押す、つまむなどのアクションを加えなければ開かないようにする」といった対策について、いっそ工具ではなく手を差し入れて、直接操作してしまおうというわけです。さきほども言ったように、薄い鉄板は穴を広げるのも容易ですから、あと少しの手間さえ惜しまなければ、それらは突破することが出来るわけです。 |
|
|
5.サムターン回し開錠 よくある質問 |
どんな錠でも被害に遭う可能性はあるのでしょうか? |
基本的にはあります。ただし、商品によっては元々サムターンが丸くて針金がかかりにくいものもあるようですが、最悪ドアに穴を開けられることまで考慮すれば、既存住宅で竣工時から対策を考慮していることはまずないと思います。 |
消防法で、難しい操作のサムターン設置は許されていますか? |
「消防法」とは建築に関連する法規で、火災などの防災時に問題が起きないように、使用する材料やパーツ、間取りや避難ルートのとりかたなどを細かに規定しているものです。これやその他の防災関連法規(細則)を無視して設計することはできません。
マンションの玄関扉は防火区画間仕切りとなり、脱出が容易であったほうがよいとされていますが、複雑な施錠がそれに抵触するかどうかは、正式な見解は出ていません。とりあえずは、個人での操作において、逃げ遅れがないよう気をつけるしかありません。 |
ドアに穴を開けられた場合、どういった復旧策があるのですか? |
今回の手口でもっとも面倒なのは、建具を破壊されることです。ガラスであればわりあい早く交換の手配がつくでしょうが、建具自体に穴を開けられた場合、速やかな復旧は困難です。復旧にはドアを交換するしかありませんが、多くの業者が応急処置として鉄板を貼り付けたり、パテで埋めたりしているようです。その際は、補修のまま恒久的な対策にもなる当社オリジナル「強攻プレート」があれば、すばやく美しい対応が可能です。
なお、分譲マンションのドアは共用部にもかかりますから(一般的には、扉は専有、外観は共有)、管理組合と折半か、全額所有者が支払うことが多いようです。もっとも、火災保険で補填される可能性が高いので、保険の内容を確認することをお勧めします。ちなみに、賃貸の場合は、全額大家が負担するのが一般的です。 |
対策をしてもすぐに破られたという記事を読んだんですが… |
全国紙で対策カバーを、チャッカマンのようなトーチで燃やす手口があると報道されたことがあります。当初、紙コップやペットボトルを使った自家製のカバー製作法が報道されたことがありましたが、それらはこの方法で破られてしまいます。リスクを避けるならば、最初から補助錠、両面シリンダーといった、高度な対策を導入するほうが良いでしょう。 |
うちは補助錠をつけているのですが、それでも対策は必要でしょうか? |
面付け補助錠は、一般の針金状工具での開錠は面倒だと思います。そもそも2ロックであれば、ドアに穴を開けるにしても、針金を差し込むにしても、1か所だけの場合の2倍の手間と時間がかかりますので、それだけでもずいぶん抑止効果はあると思われます。 |
|
|
|
|
|
|
|
|