松本建築金物店

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セキュリティ講座【第七時限】

「カム送り(バイパス)解錠」についての考察




 平成14年9月、新聞、TVなどのメディアで「カム送り開錠」という見出しがおどりました。同日、警察庁から公式に発表になった同手口は、全国でトータル9000万台出回っているという4メーカー15機種の錠前について、実名を公表し、ユーザーに注意喚起を呼びかけるものとなっています。この発表が異例だったのは、実際には同手口による被害実例はほとんど報告されていない段階での周知通達という手法が取られたことがあげられます。これをうけた一斉報道が功を奏したのか、一般にも広く浸透し、当社にも一時お問い合わせが殺到しました。

 なお、公表以前のメディアでは一部同手口を「バイパス開錠」と呼称していましたが、警察発表にならって今後は「カム送り」に表記を統一させていただきます。(2002/9/12)




カム送り(バイパス)とは何か

 「カム送り解錠」とは、錠の本体を特殊な針金で直接攻撃して開錠する方法論です。
シリンダーのリングを浮かし、そこに発生した隙間から針金状の工具を挿入し、直接錠の本体(ケース)の危険部位を攻撃し、ほぼ無傷でロックを開錠してしまうという手法です。
たとえば、自動車のカギをドアの隙間から棒状のものを差し込んで開けるのを見られた方は多いと思います。今回の手口は、それの延長だと考えていただければ、わかりやすいと思います。
この手口が怖いのは、今までピッキング対策ということで販売されていたいかなるシリンダーを装着していても、関係なく実行できる(*1)という部分です。

 ただし、この方法で開錠可能な商品というのはほぼ確認されており、警察庁より「該当危険機種」として公表されています。しかも、それらはすでに廃番になっている旧製品か、現行商品でもマイナーチェンジされていますので、今現在入手できるものはたとえ同型機種であっても、安心と思って差し支えないと思われます。(ただし、旧在庫の場合もありますので、その点お気をつけください。)
ましてや、該当以外の機種においては、いっさいおこりえない手口ですから、まず対応リストをご確認いただかなくてはいけません。

*1)カム送り対策がされた、もしくはそのように謳った交換用シリンダーというのも存在します。(下記参照)
前者は危険部位を完全に暗渠してしまう構造になったもの、後者は単純にリングの動き幅が少ないことをもって「対策品」と称しているものを指します。

資料写真

 報道では「リングカラーが動いて(左図)隙間が出来ると危険」という表現に終始していますが、実際にはこの奥にあるケース(錠前の本体)に問題があるわけで、動くかどうかというのは2次的な問題です。
実際にはここが動かない商品のほうが少ないわけで、結論から言うとここが動いても100%開錠が不可能なように対策をすることが可能です。逆に言うと、ここを動かないようにすることは、根本的な対策ではありません。
商品によって動き幅は異なりますが、かなり多く動く(10mm前後)ものもあります。



 


見分け方と対策法

「カム送り」要対策ロックセット 一覧表
メーカー フロント表記
(刻印)
対策法(各メーカー推奨、一部未発売も含む)
MIWA LAMA
LASP
  • ケースを対作品に交換する(純正、他社製品)
  • ケースに防止金具を装着する(純正、他社製品)
  • リングカラーに防止リングを装着する(他社製品)
    *LAMA標記のものについては型式がLA(レバー式)とMA
    (ノブ式)に別れます。
LD
LDSP
  • ケースを対作品に交換する(純正)
  • ケースに防止金具を装着する(純正)
  • リングカラーに防止リングを装着する(他社製品)
    *これらの商品は一部特殊機種を除いて、すべて廃番となっています。(03.6月末現在)
BH
BHSP
GOAL ASLX
HD
  • ケースに防止金具を装着する(純正)
    *ASLXはレバーハンドルタイプと本締り錠のみが対象です。ノブ式は該当しません。
SHOWA 535(535D)397
CL-30
  • ケースに防止金具を装着する(純正)
    *535刻印のものには、ノブタイプ(535)と本締り錠(535D)の2タイプがあります。刻印はいっしょです。
HORI
1210
1310
1110
1171
1311-64
1311-51
1311-38
  • リングの可動をなくすワッシャーを装着する(純正)

    *フロント表記は「HORI」のみですが、ケースを取り外すと型番のシールが貼ってあることがあります。
    *現行のケースは、工具を挿入できないよう、シールが貼ってあります。
以上、4メーカー15機種、重複型番含む                (2002.9.12 警察庁発表)

フロント刻印
 フロント刻印とは、ドアを開けたときに見えるアーマープレート(別名:フロント)にある刻印のことです。
これが上の表と合致しない場合は、対策の必要がない商品である可能性が高いでしょう。

なお、MIWA商品の対策済みケースは、フロントの刻印の下に「_」があります。 例) MIWA LA・MA
この場合は、対策は不要であると思われます。



 この手口はシリンダーの問題ではなく、錠前本体(ケース)の問題ですから、対策としては、それを現行の対策品に交換してやることがベストです。もしくは、ケースの「攻撃にさらされる特定部位」を「対策パーツ」で塞いでやることで、ほぼ完全な対策が実現できます。以下は具体的な対策についてです。
 また、おおまかな危険部位によって、以下のように危険度の仕分けが可能です。危険度が高いと思われる商品については早い処置が必要だと考えますが、それ以外については優先順位を落としてもかまわないという意見もあることを附しておきます。

MIWA LA・MA について

LA・MAケース
LA・MAケースの画像


 シリンダー装着部の上部に穴が開いているこのタイプは、発表機種の中でも、特に犯行に遭う可能性があります。

 ここを金属製の防止カバーで塞いでやることで、完全に防御することが出来ます。
また、上級の方法として、錠ケースを対策済みのものと交換することもおすすめします。
なお、対策部品について当社では汎用性の高いものを中心にご案内しています。低いものについてはあえてご案内していないか、その旨を明記させていただいております。


LA防止カバー(オリジナル商品)
ケースに装着して危険部位を完全に塞ぎます。
350円

KAKEN カバー
ケースは外さずに(シリンダーは外します)装着できるカバー。
500円

純正ケース
危険部位を塞いだ現行ケース。ご注文の際はバックセット寸法をご指定ください。*レバーハンドルの種類や長座の形状によっては装着できないことがあります
2500円
HORI/GHケース HORI/GHケース
すべての面でスペックを上げた交換用ケース。純正では使用不可なものにもほとんど対応する汎用性も魅力です。
3500円
詳細ページにGO!

対策済シリンダー
危険部位を塞ぐように工夫された形状のシリンダーです。現在GOAL V−18GMLAがこれに該当します。ご注文の際は、対策商品と明示ください。
*対策が必要ない商品の場合は、対策品だと装着できない場合があります
シルバー;6500円 色付き;7500円

狙われやすいケースの危険部位
狙われやすいケースの危険部位
長座プレート左図のように「長座プレート」がついている場合は、上記のケースが使用されていたとしても、カム送りでの開錠は物理的に不可能な場合がありますので、ご安心ください。




その他の商品

GOAL AS・LXケースの画像(B種)
GOAL AS・LXケースの画像(B種)

上記以外の商品は、ケースの上部や側面がそっくり開いているタイプになります。比較的攻撃が難しいので、リングを動かなくする程度でもそれなりの耐久力があります。
画像はGOAL AS・LXですが、他のものも似たような部位が開口になっています。
青丸はシリンダーの装着部

これらの錠は、上記LAMAタイプよりは攻撃が難易なようです。特に、木製ドアの場合や、框が狭い場合は、工具の挿入が難易です。


MIWA LD防止カバー
当社オリジナル。バックセット違いの汎用性が高いカバーです。
350円

MIWA BH防止カバー
当社オリジナルのカバーです。
400円

MIWA LD交換用ケース
危険部位を塞いだ現行ケース。ご注文の際はバックセット寸法をご指定ください。
*レバーハンドルの種類によっては装着できないことがあります
3000円

MIWA BH交換用ケース
危険部位を塞いだ現行ケース。ご注文の際はバックセット寸法をご指定ください。
2500円

GOAL ASLX防止カバー
危険部位を塞ぐ純正パーツ。
100円

GOAL HD防止カバー
危険部位を塞ぐ純正パーツ。
100円

SHOWA 防止カバー
危険部位を塞ぐ純正パーツ。型式をご指定ください。
300円

HORI 戸厚調整リング
リングの動きをころすリング。リングカラーの下に入れるので、外観的にはいっさい露出しません。厚さが違う3枚がセットになっています。
800円

SHOWA 本締り錠(535D)
SHOWA 本締り錠(535D) 

リングを噛ませるという方法について

 一部にはリングカラーが動かなくすることが肝要だというような理解をされている方もいらっしゃいます。これは、当時ほとんどの報道で「スペーサー」をシリンダーカラーの下に装着する方法が紹介されたからですが、この方法はあまりお勧めしていません。
まず、市販のリングは厚みが多様で、それを付けたからといって必ずしも隙間がなくならないため。それから、従来より外観が目立って変更されてしまい、きれいに仕上がるとは言いがたいため。また、機種によってはリング自体の破壊撤去が簡易なため、スペーサーをつけて動きをなくしたところで、あまり意味をなさないと考えられるためです。実際には、リングよりもメーカー純正のケース装着パーツのほうが強度も信頼度もあり、なおかつ安価であるため、そういう観点からもリングの設置はあまり意味がなく、根本的な対策にはならないとされるわけです。
 ところで、唯一純正として推奨しているHORIの商品についてですが、これは実験してみればわかることですが、扉に装着された状態でのカム送り作業は、本来非常に困難で、ゆえにリング固定程度でも十分に耐久できると考えられています。また、シリンダーとリングカラーの間に挿入し、外部からは見えなくなるために、市販のスペーサーリングとは意味が違うと考えられます。


 なお、TVで紹介された露出型汎用調整リングでは装着できないシリンダー(アルファーFBやGOALV-18、MIWA EC、PXなど)も多数存在します。また、シリンダーに針金を巻きつけるという方法も言われていますが、外観もいかにも素人対策のようになってしまい美しくありませんし、簡単にはずされる危険性もありますから、かならずしも得策ではありません。
さらには、クラビス、カバスター、バイサスなどの主要な交換用シリンダーには、リングカラーの動き幅を少なくするリングワッシャーが付属しています。付属していないものでも、汎用部品によって動き幅を少なくすることができます。どうしても気になると言う方は、それらで動きをなくすのもいいでしょう。


 

ご注文の方法
補助金具の場合
  1. 現在の錠前の型式(アルファベット刻印)をお知らせください。
  2. バックセット寸法をお知らせください
    「バックセット」とは、ドアの先端からシリンダーの中心までの寸法です。(下図参照)
  3. 送付は定形外郵便で190円です。
  4. 対策部品単品注文の場合は、銀行振込みで、ご入金確認後にお送りします。参照HP
対策済みケースの場合
  1. 現在の錠前の型式(アルファベット刻印)をお知らせください。
  2. レバー式か、ノブ式かの区別をお知らせください。
  3. バックセット寸法をお知らせください
    「バックセット」とは、ドアの先端からシリンダーの中心までの寸法です。(右図参照)
  4. 宅配便扱いですので、コレクトも取り扱いさせていただきます。
  5. 送料は地域によって変動します。参照HP



ケースのはずし方
根本対策をするには、まずケースをはずしてやらなければいけません。かんたんなテキストです。
  1. シリンダー装着法にそって、シリンダーとサムターン(室内側のつまみ)をはずします
  2. レバーやノブがついている場合は、それもはずします。室内側の丸座を時計と反対回りに回転させるか(おもにノブやステンレスのレバーの場合)、丸座を細いマイナスドライバーなどでこじってはずします(おもにアルミレバーの場合)。
  3. 本体をとめてあるビスをすべてはずせばとれるはずです。
  4. どうしても不明な場合は、型式とあわせてお問い合わせください。




根本対策
泥棒もおまんまの食い上げになりますから、常にいろいろな方法を模索しています。
現行手口に対応するだけの(言い方は悪いですが)付け焼刃的な対策であれば、いつ突破されるかわかりません。
そのような状況においても、2手も3手も先の対策というのが、我々が推奨する「補助錠の設置による複数施錠」なのです。
今回の件と前後して「対策されたシリンダー」も発売されていますが、そこまでの金額を再度かけずとも、十分に対応できる方法がありますので、扇動的な報道には冷静に対応ください。

なお、文章中で金額が記入してあるものは、当ショップでも販売しております。お問い合わせください。
防犯上の理由で、詳しい解説や画像の添付が出来なく、申し訳ございません。



カム送り開錠 よくある質問
ピッキング対作シリンダーに交換しているのですが ピッキングとカム送りは、まったく違う方法です。
特定機種以外の大多数のシリンダーは、カム送りの対策は施されていませんので、すでに交換されていても、更なる対策が必要になります。
これは欠陥品ではないのですか記者発表を受けた某全国紙Y新聞が「9000万台の錠で欠陥が明らかになった」と報じたことから、このような認識をもたれている方が多いようですが、これは事実と異なります。それ以外のメディアで、「欠陥」「リコール」などと報じたところはございませんし、記者発表の席でもそのような話題は出ていません。
うちの錠はリングが動くので不安なのですが 警察発表のリストをご覧ください。
それに該当しなければ、たとえ動いても攻撃のしようがありませんので、この手口については不安に思われる必要はありません。
なぜ、リングが動くのですか これは、扉の厚さが違う場合のクリアランスをもたせるための構造す。違う厚みのドアに設置できるよう、国内の錠の大多数がこのような構造になっています。
たとえば、MIWA社のLAタイプシリンダーですと、33mm以上42mm未満が標準扉厚とされています。
うちは2ロックになっているのですが対策は必要でしょうか その2つの錠がどちらも対策が必要な商品の場合は、対策されるに越したことはありません。ただ、犯罪心理的にはたいへん面倒なので、至急対策を取りなさいとまではいかないと思います。
なお、面付け補助錠であれば、この手口の危険がある商品は存在しませんので、安心ください。
なぜ、リングを付ける事を推奨しないのですか外観が変になるからです。そのほうが、対策してることを容易に知らしめるのでよいという意見もありますが、それによって完璧な対策になるのであればまだしも、あくまで仮対策の域を出ませんから、お勧めすべきとは考えていません。同等かもっと安い金額で、もっと完璧な対策が可能ですので、あえて勧めるものでないと考えています。
対策自体に消極的な発言がもされているようですが・・・ 検証しましたが、今回対策が必要だとされている一部機種については、扉装着状態ではたいへん開錠が難易であったため、それらについては「緊急性は薄い可能性がある」と考えました。
また、錠の設置状況によっても、そう簡単には攻撃できないこともわかっています。
ですから、緊急性について2段階に分けてご案内しています。
さらに、早めの広報も功を奏したのか、今回の手口はピッキングやサムターン回しほど爆発的な数の事例の発生には至っていません。
もっとも、絶対に不可能ではないため、念のためにも対策されたいということであれば、特に拒絶するものではありません。









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