ガラス破壊!
|
「網入りガラス」を「こじ破り」して、
「クレセント」をはずすところ(TV画面より) |
窓に錠がかかっている場合、それをはずすために「ガラスを割る」という手口があります。「捻子締り」の時代は、そうして錠を開けるときには、かなり大きく穴をあけ、手を突っ込んで締りを回さなければなりませんでした。ガラスを大きく割ると、それに比例して大きな破壊音がするというリスクがあり、また、手を差し込むことによって怪我もありえます。
しかし、「クレセント」は、ガラスを割れれば、あとは押せば開きます。ドライバーなどの細いものを突っ込めば、怪我の心配もありません。リスクが少なくなったのです。
|
やがて、そういった手口に耐久するために、クレセントを固定する簡単なスイッチレバーが付いたものや、サッシの下方の框<かまち>に、起き上がり式の補助錠をつけたものが登場しました。しかし、それらもガラスを割れば簡単に操作、解除できるものであったため、目覚しい防犯性能があるとまでは言えませんでした。
窓の防犯対策については、大きく進展しないまま、「割られた家は運が悪かった」程度の認識で現在まで運用されていたのです。
|
ガラスが狙われやすい場所 |
- 狭い、建物と建物の境界の通路や勝手口近辺の、周辺道路から目立たないところ。高い垣根や塀の死角なんかもねらわれます。
- トイレや浴室の小さな窓であっても、安心は出来ません。20センチ角程度の大きさがあれば、普通の成人男性でもくぐりぬけることが出来ます。
- 洗面所などに多いルーバー窓(下図)も危険です。この形式の窓は、ガラスを簡単にはずすことができます。ただし、完全に閉めた状態だと、難易になるので、外出時には必ず閉めるようにしてください。
- 面格子が付いているからと、安心してはいけません。古いものは、構造が弱く、簡単に破壊、撤去できるものも少なくありません。設置方法も、単純なねじ止め工法のものなどは、同じく簡単に撤去されます。格子があると安心して、施錠をしていなかったりと言う事例も多く、かえって被害にあう確率が高くなってしまいます。
- マンションでのガラス破り
マンション等の集合住宅にあっても、1、2階の低層はこの手口が起きやすい傾向があります。おそらくピッキングよりも頻度は高いでしょう。
また、ベランダ近辺に雨樋や電柱、ひさし、給水塔などの登りやすいものがあるお宅は、ここから侵入され、同様の被害に遭うことがあります。
さらに、最上階の場合、「下がり盗」といって、屋上からロープ等で降りてベランダに侵入する場合もあります。(最近、君島十和子さんがやられた手口です)オートロックの物件でも、そうやって侵入される事態は少なくありません。
|
ガラスを知ろう!
国内の住宅で使用される主なガラスの種類です。特性を知って、正しい使い方をしましょう。 |
- 透明板(フロート)ガラス 従来の窓のガラスは、単純な1枚モノの「板ガラス」でした。住宅の場合、和風建築では3〜4.5mm、近年のアルミサッシで5〜6mm程度の厚みしかありません。
- 型ガラス 模様やくもりが入ったガラス。透明なものにくらべ多少は丈夫そうに思う方もいますが、実際の強度は全く変わりません。
- 網入りガラス 鉄線が網目に入ったガラス。割れた時に飛散しないことが主目的で、法律で防火区画などには使用が義務つけられています。厚みも一般に使用されることが多いもので6.8mmと多少は強そうですが、飛散しないと言うだけで、割れることにかかる力は板ガラスとほとんど変わりません。大きく割れ落ちないため、かえって安全だと好む泥棒もいるとか。
- 強化ガラス 平面への垂直衝撃に大変強く、自動車の窓や店舗入口の大型ドアなどに使用されます。ボールや悪ふざけでぶつかっても割れないように、小中学校ではこれに入れ替える作業も行われています。ただし、それ以外の加重をかけると、大音響と共にガラス全面が一気に砕け散るという、恐ろしい(笑)結末を迎えます。しかし、全面玉状になって、完全に砕け落ちるため、音さえ気にならなければ、防犯の役にはたちません。(よく、合わせガラスなどを「強化ガラス」と呼ぶ方がいらっしゃいますが、それは間違いです。)
- 耐熱強化ガラス 熱を加えても割れにくいガラス。一般のガラスに熱を加えると、熱収縮で割れてしまいます。このガラスはそれを防ぐ役目があり、食器などでも似たようなものが使用されています。
近年騒がれている「焼き破り」手口には一定の効果を持ちますが、それ以外の強度は上記強化ガラスと似ているため、単体での使用は防犯にはなりません。下記の防犯合わせガラスとの併用で用いるべきでしょう。
- ペアガラス 2枚のガラスを平行に立てて、間に空気の層を持たせたものです。断熱効果にすぐれ、結露しにくくなります。また、防音にもいくらかの効果があり、軽微な騒音ならば軽減も期待できます。現在、アメリカやカナダからの輸入住宅は、ほぼすべてこのタイプになっています。
防犯については、単純に2枚以上割るという意味では効果的ですが、板ガラスよりもやや上程度と理解してください。(よく、ペアガラスは防犯になるとおっしゃる方がいらっしゃいますが、それは嘘です)
- low-E(ロウ・イー)ガラス 紫外線カット、侵入光による熱透過などの軽減機能を持つガラス。コーティングの方法によっては、サングラスのようにサンシェードや目隠しの機能も持ちます。ペアガラスの構成素材として使用されることが多いガラスです。
- 合せガラス 2枚の板ガラスでプラスチックフイルムをはさみ込んで接着したもの。フイルムの種類によっては紫外線カットの効果があり、割れた場合の飛散防止(軽減)効果もあります。「こじる」ことに対する破壊強度も板ガラスの数倍になりますが、中間膜の薄いものであれば短時間で破ることが可能です。
- 防犯合わせガラス 合わせガラスの中でも特に破壊に強いもので、防犯的に導入されるならこれ以外には考えられません。これらは、強い衝撃(ハンマーで殴る等)によって蜘蛛の巣状に破壊痕は付きますが、打撃で完全に貫通させることは容易ではありません。(よく、「割れない」と表記されることがありますが、それは嘘です)
ただし、細い鋭利なものであれば貫通は可能ですから、やはり二重ロック等の対策と併用しなければ、完全な効力を発揮することはありません。
合わせガラスは上級の規格になると、いわゆる「防弾ガラス」などの世界に入っていくような商品なのです。
|
ガラス破りの手口! |
ガラスを破る、と言っても、その手口はいくつかあります。
特に問題にされるのは、携帯可能な一般的工具による犯行で、欧米の規格や平成16年の春に発表予定の国内新法案の細則では、特にポケットに入る程度の小道具(ハンマーやドライバー)による犯行についての耐久性能が重視されます。
- こじ破り
ドライバーなどで行われる手口。クレセント周辺のみを大きな破壊音がしないように割る手口で、従来最も多い。
- 三角割り
主にガラス切カッターで割りたい位置だけを切り取ってしまう手口。開口はこじ破りと類似する。
- 焼き破り
最近流行と言われる手口。バーナーなどでガラスを加熱し、熱収縮を利用して割る。これも大きな音がし辛いのが好まれるようだ。クレセント回りで行われる。
- 投石
現場でひろった石などで割る手口。これもオーソドックスで、素人が何の準備もせずに可能なこともあり、多発する。
- 打ち破り
ハンマーやバールなどの大道具によって叩き割る方法。欧米規格ではこのあたりまでの耐久性を想定している。実際には、かなり大きな音がするため、住宅地では起こりにくい。
- クレセントはずし
ガラス破りではないが、よく見られる手口なので言及する。旧型のクレセントで、可動部などに疲労が来ているものなどは、外からサッシをゆすっただけで外れることがある。本来、窓を締め付ける役目の部品であるから、がたつきが大きくなった時点で交換すべきである。
- 番外1/特攻(?)
ショーウインドウなどに車で突入する手口で、冗談のようだが実在する。周囲に人がいても、あっけにとられているあいだに、短時間で盗み出す。当然、警備保障や警官も間に合わないことが多い。
中には、シャッターを四輪駆動車でひっぱがしてから、ガラスに突入することも。
- 番外2/銃撃・爆破
国内ではまずおきない侵入法。映画などではよくある。アメリカ同時多発テロなどの対策で、実際に対策が行われた。
- 番外3/飛来物や体当たり
手口と言うより、自然災害での話。台風や竜巻で飛ばされたものがガラスに衝突したり、野球ボールが飛んできたりというパターン。人間がオーバーランしてぶつかることも。どちらにしても、破片で怪我をしたり、留守中に穴が開きっぱなしというのでは困る。
以上以外にも手口はありますが、そのほとんどが上記に近い方法をとる亜流です。対策も、ほぼ似通っています。手口名に惑わされるのではなく、正しい対策を考えましょう。
|