面格子

2006.May.07.UpDATE




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 侵入を防止するために、窓を守る「面格子」。しかし、そこを破られて侵入されるケースが増えています。どうして?



防犯力がない?面格子
 いきなりですが、今まで住宅に設置された面格子のほとんどは、防犯を考慮した作りになっていません。特に、近年の、手荒で、執拗で、狡猾で、しかも研究熱心な泥棒に対しては、耐久する力は、ほとんど持ち合わせていません。昔は、何かしら付いているだけでも威嚇効果があったのでしょうが、現代ではそれだけでは通用しないのです。
■ 勘違い?過大評価されてきた「防犯力」
 面格子は窓を守るオーソドックスな建物部品として、以前から住宅などで多用されてきました。しかし、多くの施工者でさえ、その本当の防犯耐久性を理解して設置することはありませんでした。したがって、本来求められる(もしくは一般の方が思い描いている)耐久性には届かない脆弱な部材や、組み方、置方法になっていることが多いのです。それを、満天下に晒してしまったのが、今から20年ほど前におきた「豊田商事、永野会長刺殺事件」だったのです。

豊田商事、永野会長刺殺事件
 1985年におきた、金のペーパー商法で多くのお年寄りなどから多額の現金を騙し取ったとし世間の注目を集めていた「豊田商事」の永野会長(当時)が、テレビカメラの眼前で斬殺されたという事件。この時、永野は自宅マンションの一室に閉じこもっており、多くのマスコミは、噂される「逮捕の瞬間」を撮影しようと、その正面で待ち構えていました。しかし、現れた二人組の男が、あっけにとられる周囲をよそに、いきなり廊下の窓を壊して室内に乱入、日本刀で凶行に及んでしまったのです。

永野会長刺殺事件
壊した窓から侵入する犯人のひとり
「西日本新聞 昭和60年6月19日紙面より」

 当時、ニュースでそのシーンが繰り返し放送されたのでご記憶の方も多いかと思いますが、犯人は廊下の窓の面格子を、素手でわずか数十秒でもぎ取り、ガラスを割って乱入したのです。


 この時使用されていたものは、現在でも使われることが多い「アルミ竪(たて)格子式面格子」。そしてそれは20数年経過した現在でも、そのころと基本構造、つまりは防犯力がまったく変わっていないのです。このような強攻な方法でなくとも、このタイプの面格子は非常に簡便に突破されてしまうケースが多いのです。
■ 犯罪を増加させる「無知」と「油断」
 多くのお宅で、面格子ががあることで安心し、換気や通風のために窓を開けたまま外出されることさえ多いと思います。特にトイレや浴室などでは、当たり前のようにそうすることが多いと思われます。しかし、それが「防犯力のない面格子」であったならば、たとえきちんと施錠されている窓であっても、危険性を回避できるものではありません。ましてや、そのような窓を開け放すことは、犯罪者に「どうぞ入ってください」と手招きしているのと、なんら変わりがないということです。




面格子とは
 面格子は、窓から人が通過できないように、開口を細かく分断するものです。しかし、多くの既存面格子は、竪構(格子柱)を容易に破壊撤去し、その間隔を拡大することができるのです。それでは意味がないのは、考えるまでもありません。

 また、玄関などの脇に設置される明り取り窓などでは、錠(サムターン)を不正操作する「手」の侵入さえ防ぐために、たいへん細い間隔しか設けないこともあります。

 どちらにしても、何かしらの防御柵になっていなければ、格子の意味はありません。少なくとも、かつてはそういったものが設置されているだけで、侵入者への忌避効果があるとされていたのですが、現在では破壊されにくい面格子でなければ、防犯のためとは言えないのです。




従来の面格子の弱点
 まずは、今現在使っている窓格子の防犯力を知ることからはじめなければいけません。以下は、よく見られるタイプの面格子の弱点です。あなたの家の面格子は大丈夫ですか?

すり抜け格子があっても、その隙間をすりぬけて人体が通過するようでは、そもそも設置した意味がありません。竪格子の場合でおおよそ130mm程度以下であることが理想です。
対策
後日格子を増設することは不可能ではありませんが、デザイン、強度面に疑問が残ります。
変形
(構造破壊)
(特にアルミ格子で)薄い肉厚の型材をリベットやビスで止めただけでは、簡単な引っ張り、ひねりなどの加圧でも破断しやすく、ばらばらになる可能性があります。
対策
後日の強化は、交換以外、事実上不可能です。
接合部破壊格子や枠を構成してているリベットやビスを人為的にはずして、開口を広げることが可能です。接合部が少ない単純な形状の格子などは特に注意が必要です。
対策
後日の強化は、交換以外、事実上不可能です。
格子切断竪(たて)柱の間隔を狭くしても、たった1本取り去られることで人体通過が可能なほどの開口が生じる場合があります。アルミなどのやわらかく中空の材料はともかく、たとえ鉄のムク材であっても、10mmに満たないような細いものでは、大型のハサミでも容易に切断が可能です。
対策
後日格子を増設することは不可能ではありませんが、デザイン、強度面に疑問が残ります。
取り外し面格子を躯体(壁面)に接合しているビス、釘などが簡単に取りはずせるようでは、簡単に格子自体が撤去されてしまいます。サッシ枠にはめ込んだだけのクリップ式も同様です。
対策
ビスとブラケットを溶接で固める。それが不可能な場合でも、ビスの頭をを潰す、ボンドやシリコンで固める、特殊なビス(ワンウエイビス、特殊レンチ用ビス)を使うなどの対策が必要です。
経年による
強度低下
経年により、材料自体が錆びたり、朽ちたりすることがあります。鉄に限らず、錆びに強いとされるアルミでも腐食は必ずおきます。そうなると、材自体のの強度、耐久度も著しく低下し、接合部からの破断をおこしやすくなります。
対策
後日の強化は、交換以外、事実上不可能です。



■ 防犯力が弱い面格子の例
木の窓格子旧来からの純和風住宅や、20年程度前までの建売住宅などでは、頻繁に見られました。木である以上、切断されることへの抵抗力は低いと言わざるを得ません。また、釘で打ち付けているだけのものも多く、やはり抵抗力が低いのです。
アルミ竪格子金属の中でも、アルミはたいへんやわらかい素材で、切断に対する抵抗力は弱いものです。ましてや、一般的なアルミ製の面格子は、中空のパイプ状の型材を使用しているため、切断、変形に対する抵抗力は、木製のそれよりも劣ります。また、経年すると電食などといったアルミ独特の腐食によって、強度が落ち、リベットやビスが外れやすくなります。それに加え、旧来の施工法では、ドライバー程度の工具で、いとも簡単にはずされるものがほとんどなのです。


 そのほかに、安価な住宅用製品を、ビルなどの使用条件が異なる部位に設置して、そのために経年劣化を早めてしまうケースなどもあります。


既存面格子の強化法
 他の住宅部品に比べ、現在付いているものを後から強化することは難易です。レベルアップを望む場合は、まったく新しい強度が高い製品を、新たに設置し直すことが最善でしょう。ただし、設置方法によって強度を増すことが出来ます。この設置法は、新設の場合にも参考に出来ます。

いちばん問題なのは、いかに壁面に強固に設置するかです。一般には、ビスやアンカーで設置しますが、これではドライバーだけでもはずせます。ネジ頭を潰すなどして、工具で回せないようにしましょう。




強い面格子
 防犯的に優れた面格子の例です。

名称価格解説
CP認定取得格子高価 警察庁、国交、経産省などが音頭をとる「防犯性の高い建物部品の開発普及に関する官民合同会議」で策定された規格の認定を受けた製品。切断、もぎ取りなどに相応の耐久性があるとされている。ただし、認定要件としては、窓に同認定のサッシとガラス等が使用されていることで、この商品だけで「認定要件」とされる5分以上の耐久性を確認したものではない。
アルミ井桁組格子
アルミラチス組格子
やや
安価
アルミのようなやわらかい素材であっても、組み方を複雑にし、格子同士の接合部を増やすことによって、切断、もぎ取り対抗時間を延ばすことが出来る。
「井桁」とは正方形、もしくは長方形のマス目状に組んだもの、「ラチス」はそれが斜めで、マス目が「ひし形」になったもの。ただし、格子同士の接合が少なければ、強度は下がる。
サッシ一体型格子高価 最初からサッシに接合しているセット商品。下手に壁に設置するよりは、取り外しに対する強度が出やすい。
スチール格子 やや
高価
スチールは溶接で組み立てるため、製品強度が高い。ただし、錆びやすい材なので、確実な錆び止め処理が必要。
ステンレス格子 やや
高価
スチールよりも材料の硬度があり、切断などにたいへん強い耐久性を示します。また、錆びにくいので、屋外で長期間使用できる。
鍛造飾り格子
(ロートアイアン)

高価 古くからヨーロッパなどで使用されるデザインを模した格子。
スチール格子は強度があるが、デザインが殺風景で、それこそ「檻」のよう。唐草やひねりのはいったデザインにすることで、たいへんしゃれた窓にすることができる。本格的に加治屋に依頼するとかなり高価なものになるが、当社は型材を使用することで、比較的安価に製作可能。


 
 ただし、強度が強い面格子であっても、設置方法がまずいと、防犯力は発揮できません。前項「既存面格子の強化法」に沿って、設置方法をご検討ください。




面格子以外の窓保護対策
 面格子でない、窓の大規模な対策です。後付けも可能なので、リフォーム商材としても利用できます。

インナー格子
(内格子)
面格子と言えば建物外部に設置するものですが、それを室内側(窓の内側)に設置する方法論です。マンションなど共用部への設置が難しい場合、出窓のような物理的に設置が難しい場合などにも、設置が可能です。
また、額縁が木の場合、後付け設置がDIYレベルでも簡単で、しかも、室内側にあるが故の高破壊耐久性と、メリットも多いのです。ただし、窓の普段の開閉や掃除の妨げになることや、室内に設置することによる圧迫感などの問題があり、あまり普及が進んでいません。
それらの問題については、たとえば窓開閉や掃除には、格子自体をドアのように開閉式にする(当然、部屋内から施錠できるように)ことでも対処できます。圧迫感については、当社が推奨するロートアイアン風飾り格子のような、デザインを取り入れることも可能です。

●簡単DIY、ステンレスインナー格子 >>

鎧(よろい)戸 海外で多い形態で、日本の雨戸のようなもの。窓の外に、もうひとつの開き窓(場合によっては、引き込み戸)を設置する。主に木製だが、アイアンなどで格子状にするのも面白い。

雨戸 面格子同様、旧来製品では、防犯耐久性が著しく乏しい。ただし、設置法によっては多少の効果が見込めるようになるし、CP認定された製品もいくつか存在する<詳細は雨戸の項にて>

雨戸シャッター 近年、戸建て住宅でめざましく普及している。操作の手軽さと、シャッター=高防犯というイメージからだろうか。しかし、実際には住宅用のものは、店舗、事務所用のそれよりもはるかにスラット(羽根部分)の破壊がたやすい。<詳細は雨戸シャッターの項にて>

また、破壊防犯性能はないものより比較的劣るが、通風機能がある製品も存在する。日常的に窓を開け放すよりは、はるかに安心できるので、夜間の通気などには使えるだろう。

インナー
格子シャッター
通気と防犯性を兼ね、さらに、必要時以外は開口を保ちたいと言う、わがままな要望に応えることができる製品。おもに、掃き出し窓などの、人が日常通過する部位の室内側に設置する。普段は部屋の隅に押しやり、外出時などの必要時には、それを引き出して使用する。旧来、店舗などで使用されていた「横引きパイプシャッター」に類似する。
ただし、仕舞い寸法がかなり必要で、それが室内に存在すること自体に抵抗感があると言う意見も少なくない。
通風シャッター
通風パネル
通風雨戸
必要な場合に通風させることができる機構を有した製品。シャッター、雨戸を模したものや、目隠しパネルと面格子を兼ねた形式のものまで、いくつもの提案商品がある。
これらに共通する話として、少しの通気を必要とする場合にも、窓を開放する必要がなく、その分安全性が高いと言えるが、羽根が可動するということは、その分接合性が劣るということなので、暴力的な破壊が行われた場合には、耐久性に疑問が残る。そういった観点から、通気状態にして外出すると言うことは、基本的に推奨できない。



■ 面格子 Q&A ■

 






















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