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ガラス割り対策として同様の効果があるとも見える「合わせガラス」と「セキュリティフイルム」。 しかし、お互いの業者間では、中傷的な宣伝ばかりが見受けられ、本当の効果が見えにくいように思えてなりません。そこで、中立公平な目から、両者の正しい実力を探ってみたいと思います。禁断の比較実験のはじまりです。
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両者を比較する場合、もっとも気になるのは、割られたときの状態、すなわち防犯力です。
一般住宅の窓(厚み6mm)は、1打でごらんのように破綻します。では、防犯合わせガラスとセキュリティフイルムでは、どのような違いがでるのでしょうか。 |
打ち破り試験(於:当社内) |
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6mm透明ガラス+
260μmフイルム(片面) |
FL3+60+FL3
合わせガラス |
1打目 | | |
2打目 | | |
3打目 | | |
*フイルムは技能士による施工後、60日を経過したもの
フイルムは室内側に貼り付け、枠に飲み込ませたもの
どちらも四方をシールにて固定
実験の結果、ガラス自体が割れ落ちないという部分では、おおむね同様の結果が出ました。しかし、クローズアップして見ると、大きな相違点が浮かび上がってきます。
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相違点1 ガラス飛散量 |
フイルムを室内に貼ったガラスは、室内への破片の飛散はまったくみとめられませんでした。フイルム面で完全にシールドされているというわけです。一方、合わせガラスは、それが確認されました。衝撃の伝わる方向が部屋内側に向くため、屋外より室内側に破片散乱量が多いのが特徴です。
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相違点2 ガラス残存量 |
殴打部の拡大画像 (実験終了後、殴打面側から見たもの) |
6mm透明ガラス+270ミクロンフイルム |
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殴打部はガラスはほとんど残存せず、フイルム面だけが露出している
また、殴打点を中心に円形にガラスとフイルムの剥離が見られ、ガラスは容易に取り除くことが出来る |
FL3+60mil+FL3 合わせガラス |
| 粉々に砕けながらも、内外共、ガラス片は張り付いた状態を保っているので、中間膜の切削はやや難しい |
画像を見ても判るように、殴打部周辺のガラス残存量 は、防犯合わせガラスのほうが明らかに多いようです。一方、フイルム施工製品の同部位は、ガラスが脱落し、フイルムだけの状態です。フイルム自体は、ナイフ等で切削が容易ですから、これでは侵入を阻みきることはできません。今回はCP未満の製品での試験ですが、フイルムが厚くなったとして、あまり状況は変わらないと考えられます。
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合わせガラス、セキュリティフイルムとも、施工は非常に短時間で済むでしょう。よほどの大邸宅でもない限り、1日、半日という単位で施工は完了します。しかし、実用の状態に至るまでは、そこから先の期間が必要となります。
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実用強度が得られるまでの期間 |
合わせガラスをゴムビートによる乾式工法でおさめた場合は、最終到達強度は即時発揮されます。しかし、シール施工を行った場合は、それが乾燥するまでの時間は、触ったり、強い衝撃を与えることは避けなければいけません。それでも、おおむね半日〜丸1日で、実用強度に達します。
一方、セキュリティフイルムは、大半で行われる湿式工法で貼り付けた場合、最大強度まで至るのにおおむね1ヶ月以上が必要です。これは、施工液がフイルムを透過して乾燥するまでの期間、また、接着剤が紫外線の影響などで徐々に硬化し、十分な接着力に至るまでの期間が必要だからです。この期間以内は、剥離しやすい状態ですから、万が一賊に攻撃されたら、簡単に剥離してしまう可能性があるのです。なお、乾燥養生期間は、気温や湿度の高低、結露の有無などで変動します。
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製品寿命は合わせガラスが20年以上に対し、セキュリティフイルムは10年程度だとされています。
合わせガラスの場合、少なくともガラスに亀裂痕が発生したり、中間膜が白濁し接着力が弱くならなければ交換の必要性はありません。白濁の原因としては、ガラスエッジの浸水があります。ただし、よほど厳しい気象条件や、下手な施工でなければおきうるものではありません。 品質も、工場で仕上がってくるものですから、均一性については信頼が置けます。
ただ、合せガラスは建材としての履歴が浅く、実地での経年に関するデータが極めて少ないのは事実です。今後、何かの問題がおきないかどうか、見守る必要はあります。
セキュリティフイルムは接着剤の劣化や剥離が、防犯性能に大きく関与します。単順に貼り付けただけのものなので、施工法によっては剥離がおきやすくなります。たとえば貼り付け時の空気抜きが上手くいってなかった場合や、接着面の汚れが除去しきれていなかった場合などです。いくらプロの施工といえども、工業製品でなく手仕事ですから、貼り付け方はきれいでも、強度がどれくらいあるのかは、まったくの未知数としか言えません。
また、いくらそれをクリアしても、接着剤の劣化は避けられません。接着剤は特に紫外線による変質で、確実に寿命が短くなります。また、フイルムが表面に露出していますから、施工後にスクラッチ(擦り、切り)傷が発生する可能性が高く、それが原因で剥離が発生する可能性もあります。よく、自動車のウインドウフイルムで、気泡が無数に入り、剥がれかけたようになったものを見かけますが、極端にはあのような状態になります。
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知られていないフイルムの耐用年数 |
フイルムの場合、多くのメーカーが自社での施工においてのみ保証期間を定めています。たとえば、大手フイルムメーカーの3M社などは、自社の飛散防止用途フイルムに対し、それを3年としています。当然、ユーザーのDIYの施工では、保証の対象とされません。実際には「貼ることは安易」でも「効果がある貼り方ができるか」は疑問が残るからです。
また、セキュリティフイルムメーカーも統括する「日本フイルム工業会」からは「内貼りのガラス飛散防止フイルムは10年ごとの貼り替えを目安とする」と言う発表が公式にされているのは、多くのフイルム業者が発表していない事実です。つまり、少なくとも10年程度ごとに貼り替えをしなければ、接着剤が劣化し、十分な飛散防止効果が得られなくなることがありますよ、ということです。飛散防止効果は、そのまま防犯力と言い換えることも出来ると考えます。(ただし、使用条件により、実用最長耐用年数は異なります。実地試験試験データとしては15年を超える耐用<前出の3M社製品>を示す例もあるようです)
フイルム販売業者の中には「フイルムはプラスティックだから、半永久的に劣化しません」などとアナウンスしているところもあるようですが、それはあくまでフイルム自体のことでしかなく、飛散防止効果(割れ落ちの防止)が得られない状態であれば、それは製品としての寿命は尽きていると断言できるでしょう。
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セキュリティフイルムは、屋外からとくらべ、室内からは比較的簡易に割ることが出来ます。たとえば、火災や大地震による建物の倒壊などで窓から脱出したい場合に、合わせガラスよりもはるかに短時間に実行が出来ます。
これは逆に消防隊レスキューの侵入にも言える事です。消防法では、開口部を「避難計画等に支障のない範囲において」確保しなければいけません。東京都の条例では、3階建て住宅の3階部分については、破壊がままならない合わせガラスを使用することを禁じているほどです。
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やはり、気になるのが導入金額でしょう。
一般に言われるのは「合わせガラスは高価で、フイルムは安価」ということです。ただ、これはあくまで初期費用の問題で、ユーザーとしてはランニングを含んだ総コストを理解しておかなくてはいけません。以下は、一般的な現場状況における、当社の標準的な価格です。
<価格対比表 (1平方メートルあたり)>
FL3+60mil+FL3合わせガラス
入れ替え | |
175μmフイルム
貼り付け |
商品代(2箇所) |
32,000
単価16,000 | 商品代(2箇所) |
16,000
単価 8,000 |
施工費 | 30,000 | 施工費 | 30,000 |
シール施工費 | 4,000 |
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撤去費用 | 3,000 |
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諸経費 | 10,000 | 諸経費 | 10,000 |
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では、10年目に貼り替えを行った場合はどうでしょう。合わせガラスは10年目での入れ替えの必要性がありませんから、ランニングコストはかかりません。一方、セキュリティフイルムは、初期導入費用にプラスして、既存フイルムのけれん撤去費用がかかります。
たとえば、導入から18年目で見れば・・・
FL3+60+FL3 合わせガラス | | 6mm透明ガラス+175ミクロンフイルム |
初期導入費用 | ¥79,000 | 初期導入費用 | ¥56,000 |
貼り替え費用 | ¥0 | 貼り替え費用 | ¥76,000 |
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このように、長期的なスパンで見れば、価格差は逆転します。さらには、CP基準の350ミクロン以上のセキュリティフイルムについては、平米で20,000円(材工共)程度だと言われています。これでは、最低ランクの防犯合わせガラス(30mil)とほぼ同じになってしまい、価格的な優位性はさらに薄くなると言わざるを得ません。
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●防犯耐久性 | 劣るが、ある | ある |
●飛散防止効果 | 非常に高い | 高い |
●養生期間 | 1ヶ月 | 24時間 |
●耐用年数 | 10年 | 20年以上 |
●脱出難易度 | 比較的簡易 | たいへん難易 |
●初期コスト | やや低い | それなり |
●ランニングコスト | 必要 | 不要 |
以上のことから当社が出した結論は、執拗に開口を開ける手口(上級の防犯用途)には「防犯合わせガラス」の方が比較的長時間耐久するが、短時間の単調な攻撃や飛散を防止効果を求めるには「セキュリティフイルム」でも適。ただし、近々に効果を得たい場合、10年以上の長期間使用したい場合には、フイルムは避けたほうが懸命、ということです。
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セキュリティフイルムを防犯的に使う場面とは? |
しかし、実地において、ガラスの交換が物理的、現実的に不可能な場合というのがあります。
たとえば、旧式のサッシや和風建築の木製建具などは、3〜5mm程度のガラスしかはめ込めないことがあります。その場合、建具から入れ替えなければ防犯合わせガラスを導入できず、金額的にもかなりの負担になります。そういった場合は、多少簡易的になったとしても、フイルムの貼り付けは選択肢のひとつでしょう。
また、賃貸住宅の場合は、ガラス入れ替えが禁止されていることもあります。そういった場合、面倒ではありますが撤去=原状復帰が不可能ではないフイルムは、最低限の防犯装置として役に立つと思われます。(ビート施工であれば、剥がさずとも、退去時にガラスごと入れ替えることで原状復旧が可能です)
なお、分譲集合住宅においては、それぞれの管理組合による「管理規約」などでガラス入れ替えが禁止されている場合があります。そういった場合も、フイルムが唯一の選択肢になる可能性はあります。
ただしこれについては、一昨年に国土交通省が発表した「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」において、接地階等については「破壊が困難なガラスを使用したものとすることが望ましい」とし、同時に発表された「共同住宅に係る防犯上の留意事項」においても、「避難計画等に支障のない範囲において窓ガラスの材質は、破壊が困難なものであることが望ましい」としています。
それら新方針と旧来の規約に整合性を持たせるために、平成16年1月に同省から「中高層共同住宅標準管理規約」の改定がなされました。その中で「窓ガラス等開口部の改修において、防犯などの住宅性能向上等に関するものについては、管理組合が責任と負担を持って計画、実施するものとする。ただし、速やかに実施できない場合は、各区分所有者の責任と負担で実施することについて、細則を定める。」としています。つまり、改修交換は認めなさいということだと理解します。
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