防犯合わせガラス

2006.May.07.UpDATE




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 窓の強化策として最も注目を集めているものに「ガラス自体の強化」があります。被害に遭いやすいガラスを「割れにくく」する、ある意味、単純明快な対策です。

 そういった場合に用いられる製品として、防犯合わせガラスセキュリティフイルがあります。まずは、防犯合わせガラスから勉強してみましょう。



■ 「防犯ガラス」 とは? ■

 世間で防犯ガラスと呼ばれているものは、正確には「防犯合わせガラス」という製品群を指します。これは「防犯的機能を有した合わせガラス」という意味です。

そもそも合わせガラスとは?

 合わせガラスとは、2枚のガラスの中間層に樹脂フイルムを挟んで圧着成形したものの総称で、デザインフイルムを使用した装飾用ガラスと、破損時の飛散防止(ガラス片による怪我の軽減)を目的とした機能ガラスに大別されます。後者の場合、中間膜にPVB(ポリビニルブチラール)という軟質材を使用することが多く、自動車のフロントガラスなどで広く採用されます。

防犯合わせガラスと一般用合わせガラスの違い

 PVB、もしくはポリカーボネイト樹脂を中間膜を有した製品のなかで、その厚がある程度以上のものについては、国内外のいくつかの規格において「防犯性が高い」とされています。ここで言う防犯性とは以下のとおりです。

  1. 普通のガラスのように、簡単な工具による打撃で割れ落ちない(開口が生じにくい)
  2. よって、素手や工具で、クレセント等を直接操作、攻撃しづらい
  3. 大穴が生じにくいので、人間がそこから出入りするのは非常に難易(特に大開口は生じにくい)
唯一の防犯仕様ガラス、「防犯合わせガラス」

 防犯合わせガラス以外の機能ガラスを「防犯用」と間違って思い込んでいる方が、少なからずいらっしゃるようです。建築や不動産の仕事にに係っている方でさえペアガラスや強化ガラスを「防犯力がある」と、誤って説明をしていることさえあります。しかし、一般に流通しているガラスで、防犯合わせガラス以外で防犯力があるものは存在しません。




■ 防犯合わせガラスの定義 ■

 実は、国内 に「防犯合わせガラス」という工業規格はありません。しかし、ガラスの防犯力を定義したいくつかの規格は存在しますので、それらをクリアした製品を、そのように呼称しています。


合わせガラスの概念図
ガラスとガラスの間に複数層からなるフイルム(中間膜)を挟んで圧着している
防犯合わせガラスの基本仕様

 合わせガラスでは、中間膜の厚みが、防犯性能に大きく関与すると考えられています。CP規格の基準では、PVBの場合で厚みが30mil(ミル 1mil=約0.025mm)以上あるものを「防犯性能がある」としています。

防犯的なガラスを定義した規格

CP規格(官民合同会議認定品)
 「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」で定義されたもので、国内唯一の防犯に対する規格。ただし、受験はメーカーの任意。原材料に関しての目安を示すとともに、実際に「こじ破り」「打ち破り」「焼き破り」の実験を行い、はめ込まれたサッシの開放までに5分以上かかったものを合格としている。 
 ちなみにガラス部門の規格の骨子となったのは、CP以前に「板ガラス協会」が自主制定していた「防犯指針」。
海外の規格
 防犯ガラスが国内で注目され始めた当初、海外で実際に運用されている規格を参考に、製品紹介をしていた。アメリカ合衆国・防犯基準分類と、欧州連合(EU)防犯性能規格による分類はその代表格。どちらも、ドライバーなどの小道具から、バールなどの大道具まで、使用される凶器や手口を段階的区分し、それぞれに耐久しうる製品仕様を明示した、明解なものとなっている。なお、CP規格との最大の違いは、国内では「中間層30ミル以上がOK」としているのに対し、海外では「(同)60ミル以上でなければ防犯的でない」としている点だ。




■ 防犯ガラスの実力 ■
 防犯合わせガラスは、あくまで「割れないガラス」ではありません。では、そのどこが防犯的だということなのでしょうか?
防犯合わせガラスが割れるとどうなる?
一般住宅で多用されるガラスと、当社がもっとも多く施工する防犯合わせガラスの破壊比較実験(打ち破り)です。

 合わせガラスといえどもガラスですから当然ガラス面は破断はしますが、それでも貫通穴は開きません。つまり、生じた開口からクレセントを操作したり、ましてや人体を通過させることは困難だということです。
手を差し込める程度の穴が生じるまでに2分半、人体通過可能にするまでは5分以上の攻撃が必要だとされています。


6mm透明ガラス
FL3+60+FL3
合わせガラス
1打目
2打目
<以下、試験終了>
3打目

使用工具:900mmバール(ピッキング法による所持禁止工具)
FL:フロートガラス=通常の透明ガラス 3は3mmのこと

防犯合わせガラス、手口ごとの耐久性

 防犯合わせガラスは、各犯罪手口について万能に耐久できるというものでもありません。実際にどのような手口には耐えられ、また耐えられないかを知ることも必要です。

 打ち破り
 上記実験でもわかるように、打ち破りについては十分な耐久性を発揮します。ただし、それは工具の種類や、攻撃する部位、費やす時間にもよります。
 こじ破り
 こじ破りについても、打ち破りと同様の強度を発揮します。
 焼き破り
 PVBは、焼き破りついては、あまり高い耐久性は示しません。大きな音がしないため、逆に好む犯人も居るほどです。所要時間は(小開口を開ける場合)打ち破りと同様は必要です。
 ポリカーボネイトを中間膜に利用したものは、これに強い耐久性を示します。ポリカは硬質な樹脂で、自己消火作用があり、耐候性も高い商材です。
 突き破り
 突き破りと、それに伴うガラスのサッシ枠からの抜け落ちについては、通常の防犯合わせガラスは、やはり高い耐久性を示しません。特に、一般住宅でゴムビートによる施工を行った場合は危険です。これを強化したい場合は、シール施工をするか、抜け落ち対策がとられた防犯合わせガラを選択することが必要です。 
※この手口はCPの試験項目にはありません




■ 防犯合わせガラスの種類 ■

防犯合わせガラスには、一般的に以下のような種類があります。

一般的な防犯合わせガラスの種類と、
耐久できる工具の目安(海外規格より)
PVB 30mil
小型ドライバー
PVB 60mil
ハンマー
PVB 90mil
大型バール
ポリカーボネイト
バール
バーナー

 防犯合わせガラスは、中間膜の厚み及び材質の違いにより大別できます。それを挟むガラスの厚みについては、それほど重要視されていません。当然厚いほうがいいのでしょうが、既存のサッシにはめ込む必要性から、60milで2.5mm、30milだと3mmのフロートガラスが用いられることがほとんどです。
高機能な防犯合わせガラス

 ここでは、何らかの特徴、効果がある防犯合わせガラスをご紹介します。

お見舞金制度がついたもの
メーカー独自の「お見舞金」を謳った商品。ガラスを割られて被害に遭った場合に1枚1万円程度のお見舞金が、メーカーより支払われる制度。壊れたガラスの入れ替え支出の足しにはなるが、すべてをカバーするにはまったく足りない。
割れ替え保証、保険がついたもの
導入した防犯ガラスが割られた場合の入れ替えを無償で行い、なおかつ、金銭等の窃盗被害について一部を補填する保険を付帯した商品。
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抜け落ち防止機構があるもの
突き破りの項で述べた「抜け落ち」に対する対策が取られた商品。既存サッシでの入れ替えで、CP認定実験同様の効果が得られる唯一の対策。
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断熱効果があるもの
多くの新築住宅で採用されている断熱ペアガラス(サッシ)。この内側のガラスを合わせガラスにすることで、断熱と防犯が両立させることが出来る。ほとんどのメーカーでそういったセッティングが可能。一部には、防音効果の向上を謳ったものも。
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プライバシーに配慮したもの
不透明のPVBフイルムを使用したり、片面のガラスを不透明なものにした場合、プライバシーを守りながら防犯性をもった使用にすることがでる。
網入りガラスを使用したもの
片面に網入りガラスを使用することで、建築基準法、消防法でそれを使わないとならない建物の部位でも、合わせガラスを採用することが出来る。
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■ 防犯合わせガラス導入の際の留意点 ■
 製品の防犯力はかなり高いと考えられる「防犯合わせガラス」ですが、弱点もあります。それを知っておかなければ、被害にあってしまう可能性はなくなりません。
CP認定のガラスに入れ替えたからといって、5分も耐久しない

 CP認定では、窓を突破し侵入出来る状態になるまでの時間を計測し、5分を超えれば「認定シール」の表示が許されます。しかしその試験は「CP認定を得たサッシ(クレセント以外に適切な補助錠が既設されている)に受験するガラスをはめ」行うもので、たとえガラスが時間内で開口を開けられてしまっても、錠やサッシが開けられなければ合格します。実際に、ガラス単体での試験では、5分も耐久しないものが多いのが現状です。

一般サッシとCPサッシの相違点
 CPサッシも既存サッシも、錠についてはクレセント+スイッチ式ラッチの2ロックと、ほぼ同じものです。合わせガラスの設置による突破時間の増大を鑑み、据え置きとなっていると考えられます。
 最大の違いは、ガラスの呑み込み量です。CPサッシの場合、それが10mmありますが、従来のサッシは6mm程度しかありません。つまり、強い力で押された場合のガラス抜け落ちに対する強度が弱いということです。こじ破り、打ち破り、突き破りの耐久時間に影響すると思われます。

■ 防犯合わせガラスと同時に行いたい追加対策 ■
【必須】 補助錠の設置
 合わせガラスであっても、細いドライバー等を突き刺す程度であれば、ごく短時間で遂行できます。それでクレセント等を不正に操作することも出来てしまいます。このことから、たとえそういったガラスを導入したとしても、何らかの補助錠の設置は必須であると言えます。この場合、外部からの不正操作困難な、かぎ付き、暗証番号式といったもので、かつ、ビスでサッシに固定するものが防犯力が高いでしょう。
【推奨】 シール施工
 一般住宅のサッシでは、ガラスはビートと呼ばれるゴムパッキンで固定されています。しかし、防犯用途の場合、それだけではサッシ枠との固着が甘いため、故意に抜け落ちさせられる懸念があります。そこで、それを防ぐためにシリコンコーキング材でシール処理をおこないます。固定以外にも、水濡れに弱いエッジを水密処理することにもなり、一石二鳥です。
 なお、住宅用サッシは本来コーキングする構造になっていないので、やっても効果がないというご意見もあるようですが、実地で効果があると判断できていますので、やったほうが良いでしょう。




■ 防犯合わせガラス Q&A ■

 
Q1 防犯ガラスって、割れないの?
防犯ガラス=割れないガラスだ と思い込んでいる方が多いのですが、それはまったくの勘違いです。逆に言うと、絶対割れないガラスは地球上には存在しません。あくまで、割れても破片が落下しない、開口が生じにくいガラスです。
Q2 防犯ガラスと防弾ガラスって、同じなの?
防弾ガラスの性能は、銃弾などが貫通できないことで図ります。単順には、防犯合わせガラスのもっと層が多いものと考えてさしつかえありませんが、別の規格に準拠していますので、防犯=防弾ではありません。爆風でも開口が生じないという「防爆ガラス」も同じことが言えます。
Q3 既存住宅のガラスを合わせガラスに変更する場合、サッシも交換しないといけないんでしょうか?
そんなことはありません。防犯合わせガラスは総厚みで8mm程度はありますが、通常のサッシは溝幅が10mm強程度はあります。つまり、現状のガラスより厚くなったとしても、よほど旧式のサッシでない限り、問題なく入れ替えは可能です。
Q4 お見舞金、割れ替え保証などがある製品のほうが強いのでしょうか?
そんなことはありません。たとえば旭硝子でお見舞金制度が付帯した「セキュオ」と、それがない「ラミセーフ」は、製品は同一のものです。両者の価格差は、付帯サービスの価格差と考えてかまわないでしょう。
Q5 どのメーカーの合わせガラスが、いちばん強いのでしょうか?

PVBの厚みが同一であれば、基本的にはどのメーカーの製品も、強度的な差はありません。もともとこの用途PVBは、世界でも3社程度しか生産しているとメーカーがなく、各ガラスメーカーはそのいずれかをランダムに購入して、自社製品に加工しています。某メーカーなどは、複数のメーカーの中間膜をランダムに使用しています。
ただし、唯一抜け落ち対策がとられた「セーフレックス」だけは、一般サッシでの交換について、他の製品より単体性能が高いと言えます。

Q6 既存サッシではめ替えが出来ない場合は?
既存サッシで、溝幅が狭い場合は、はめ替えが出来ません。特に、網入りガラスが入っている場合や、単板サッシをペアにする場合などで、溝幅が足りないことがあります。そういった場合でもアタッチメントといわれるパーツを用いれば、交換自体は可能です。ただし、窓ガラスの面積が若干狭くなります。











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