ピッキングの犯人像と背景 |
犯人像
スーツを着込みサラリーマン然としたり、作業員風の服装で工事を装ったりすることがあります。
被害額
1件での被害総額は、数万円から、多いときは数百万円。現金がないお宅でも、宝石、通帳、カードなどから、金庫、高級腕時計、パソコン、テレビ、パスポートや保険証、キーを見つけた場合はガレージの自家用車までと、あたりかまわず持ち去ります。これは、犯人の集団化とともに、インターネットなどの故売ルートが広まったためと解釈されています。
繰り返し侵入
痕跡が残らないため、何度も進入し、少しずつ盗み出すことがあります。ご丁寧に、施錠してから逃走することもあり、その場合居住者も気付かないこともあります。
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集団犯行の増加 |
ピッキング渦を境に、それまでと犯人像の傾向が変わったと言われています。そのひとつが、いわゆる「窃盗団」の増加です。窃盗団は5〜10人程度のチームで行い、それぞれ下見、見張り、カギ開け、物色、換金といった役割分担がされています。外国人グループの場合、日本人協力者に移動の際の車の運転(元締めの暴力団関係者など)、換金(雇われた多重債務者など)が行うことも少なくありません。これらを外国人がやると、不案内だったりと、怪しまれるからです。
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外国人犯罪の増加 |
「ピッキング=中国人」という話があります。確かに、ピッキングを含む侵入盗で検挙された外国人の8割は中国籍だった、また密入国者も多いという警察データがあります。
ピッキング窃盗団と「蛇頭」
「蛇頭(スネークヘッド)」とは、いわゆるマフィアというより、密航を請負うコネクションの総称だと言われています。 密航は基本的に成功報酬で、入国確認後に200〜300万円の費用を元締めに払うようになっているようです。この額は、人件費の安い中国では莫大なものですが、ピッキング犯の月収は150〜200万といわれていましたので、まじめに?働けば2ヶ月程度でペイできる計算です。そのあがりは、地下銀行を通じて本国に送金され、出身者が多いといわれる福建省では「ピッキング御殿(?)」なる豪邸もあると言います。
ピッキングが住宅侵入手口として広がった背景として、パチンコ台に裏ロムを仕掛けていた犯人グループが転回したとする調査意見があります。同事件は、やはり中国人を中心としたグループによるもので、遊戯店のホールへの侵入手口として使われていた同手口を、事務所荒らしや住宅侵入に転用したものだと言うことです。最初から本国で練習を重ねて来る者もいるようですが、ほとんどは入国後、蛇頭に斡旋されて始めるようです。中には、留学生が犯罪に転化したケースもありました。
検挙された場合、当然強制送還になるのですが、同一人物が違う名前のパスポートで、再度入国、再逮捕された事件なども報告されており、この犯罪の撲滅の難しさを垣間見る気がします。
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凶悪化する犯行 |
外国人犯罪が増えることで、犯行が凶悪化したといわれています。住人が居るにもかかわらず侵入(居空き、忍び込み)されたり、待ち伏せや、犯行中の部屋に行き合わせての暴行、強盗被害に遭う件も報告されています。(これらは強盗、傷害などに仕分けされるため、統計上、空き巣の認知数には加えられません)以下は、平成10〜12年にかけ、ピッキングに関係がある犯行の一端です。「盗られるものがないから大丈夫」というレベルの状況でないことをお知りおきください。
東京都 | 臨月の主婦が帰宅したところ、家の中にいた犯人に催涙スプレーのようなものをかけられ負傷。 |
東京都 | 男性。帰宅したところ、家の中にいた複数の男にバールで殴打され、その間に逃走された。 |
東京都 | 女性の独り暮らし。侵入していた男からガムテープでぐるぐる巻きにされ、 通帳の暗証番号を聞き出される。 |
金沢市 | 検問中の警官から職務質門を受けたワゴン車から、短刀、バール、ハンマーとピッキング工具が発見された。 |
埼玉県 | 警官が通報を受け不審者を追跡中にもみ合いとなった。被疑者が奪い取った拳銃で警官が撃たれ重症を負う。 |
関東
/関西
/九州 | 東京、大阪、福岡などをまたにかけた連続広域強盗事件。資産家の宅に侵入し、在宅の家人を縛り、金庫を運び出した。リーダーは暴力団員で、中国人を中心としたグループを構成していた典型的なパターン。 |
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ピッキングは中国人の専売特許にあらず |
しかし、なにも事件は中国人だけがおこなっているわけではありません。検挙の大半は日本人です。なかには、暴力団員がしのぎとしておこなう場合や、業者が技術を悪用するケースまであります。
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技術の流出が止まらない・・・!? |
専門技術で、一子相伝に近い部分があったピッキングの技術は、情報化社会の波に乗ったように、広く伝聞されることとなりました。詳細を解説した技術書を発売するアングラ系出版社も存在しますし、専用工具は、ネットでの通販やオークションで活発に売買されているのが現状です。(現在は法律で、業務をなさない者の用具の所持は、それだけで処罰の対象となります)
なかでも、「カギの専門学校」と称する団体による技術の流出は、深刻だと言う意見もあります。これらは各種学校の範疇ではなく、規制もありません。成長分野であるセキュリティ産業での独立開業支援と言う名目を掲げるところも多いようですが、思ったように売り上げが上がらず、結局技術を犯罪に転用するケースさえ散見されています。倒産したある学校などは、卒業生を数千人排出したとも言いますが、その中でブームが去った現在でも業に携わっているのは、その何割も居ないようです。他人の家のカギを開ける技術は持ってはいても、どこで何をしているかわからない者が何千人もいるという事実は、ある意味恐ろしいものがあります。
ピッキング騒動が生んだトンデモ事件 |
カギの学校で技術を習得
ピッキングで空き巣をはたらこうと、グループのひとりを受講させ、その技術を共有、犯行に及んだ。
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カギの業者がピッキングで侵入
好意を寄せる女性の家にピッキングで侵入した業者が逮捕された事件。女性には面識がなく、いわゆるストーカーであった。業者はカギの学校で技術を得ており、開業してわずかしか経っていなかった。
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カギの学校の経営者が殺人
自分が開発に関与したカギを宣伝するための記事を依頼した男が、意に反した暴露記事を書こうとしたそのフリーライターを共謀して殺害、遺体を東京湾に遺棄した事件。主犯の男は、業界では有名な学校(事件当時は閉鎖)の経営者。
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食うために、カギを壊す
仕事が少ないことを苦にした鍵屋が、近隣で鍵穴にボンドを注入し、その後何気ない顔で営業に回った件。しかし、犯行に及んだ数十件のうち、依頼が来たのは数件のみだった。
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ピッキング よくある間違った報道認識 |
ピッキングに弱いシリンダーは、欠陥商品ですか? |
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錠前技士の間では、「ディスクシリンダー」はピッキングで開けやすいものであることは知られていましたが、それは特殊技能の話であって、商品の欠陥でないと考えられています。この事件以前から、ピッキング被害はあったわけですし。
メーカーでは「不正な行為に対する瑕疵責任は負わない」と表明しています。 |
高価な鍵、外国製の鍵でないと防げないの? |
| ある一定レベル(性能表示で5分以上耐久)以上のものであれば、窃盗団レベルでピッキングで開錠されることは稀です。価格が安かったり、外見は普通のかぎでも、ピッキングに強いものは、多数存在します。 |
「このカギしか安全なものはない」業者に薦められたのですが? |
| 単にその鍵屋さんが気に入ってるものだぐらいでお考えになったほうがいいでしょう。試しに、複数の鍵屋さんに聞いてみると、お勧め商品はすべて違う商品だった・・・ということもよくあります。その製品がいい悪いはべつとして。 |
「縦穴のカギ」は危ないの? |
| いわゆる「縦向きのカギを横向きに」と言うキャチフレーズは、美和ロック社がディスクシリンダー(縦穴)を、新標準シリンダーU9(横穴)へ交換しましょうという、自社キャンペーンのものです。縦横でピッキング難易度が変わるわけではありません。実際、MIWA製品で高防犯とされる「PR」も「JN」も縦ですし、他社の防犯シリンダーのほとんどについても、縦向き穴です。 |
「このカギも、最近開けられるようになった」と言われましたが? |
| 鍵屋も商売ですから、研究は欠かせません。そのなかで、方法が確立されたり、専用開錠工具が開発されることもあります。しかし、修練せずに短時間で開けられるというものでもありませんし、なにより市場占有率が低い特殊キーの開け方をマスターするのは効率的ではありません。短絡的にそのように言うのは、より高価なものを勧めたい営業トークと思ってください。 |
「鍵穴がないからピッキングできない安心な錠です」と、薦められましたが? |
| ピッキングは鍵穴をいじる技法ですから、それがなければできないことは明白です。リモコン、指紋照合、暗証番号式のものなどがこれにあたります。ただし、それらのなかには、販売履歴が浅いものも多く、防犯力が低いものも少なくありません。だとすると、ほかのもっと簡単な手口で開けられてしまう可能性すらあります。一方的なCMに惑わされず、よく吟味して選定をしてください。 |